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スペイン映画「La Voz Dormida〜沈黙の叫び」(ベニト・サンブラノ監督、2011)を大阪・十三の第七芸術劇場で観ました。(もうひとつの邦題は「スリーピング・ボイス」)
舞台は、1940年。内戦はその前年に終わったものの、内戦に勝利したフランコ側の共和派狩りは徹底します。この共和派狩りはあと何年も執拗につづけられのです。それは独裁者フランコが死ぬ1975年までつづけられたと言っても過言ではないでしょう。スペイン社会と国民性には、こうした執拗さがあるのです。これはひとつには半島という地政学的位置が関係しているのかもしれません。イベリア半島といっても、接している外国はフランスのみで、その間にはピレネーという越えがたい山脈が横たわっているために、スペインはヨーロッパ大陸の一部でありながら、島嶼のような自足した地域なのです。
内戦後も共和派の残党(共産党員)が山にこもって、抵抗を続けているのです(スペインは実は山国です)。
そんな中、共和派と少しでも関係のあった女性たちは次々と当局に拘束され、カトリックのシスターたちが管理を担当する施設に収監されています。そうした女性たちは、おざなりな裁判の後にほぼまちがいなく死刑を宣告され、処刑されるのです。
主人公の女性ベビータは、妊娠中の姉がその施設に収監されているために、家政婦をしながら面会におとずれるのです。その最初の面会日、施設を出たところで、共産党のシンパが近づいてきて、連絡要員となるよう迫ります。仕方なく従うベビータ。姉オルテシアの夫は山にこもっていますが官警との銃撃戦で重症をおっていたのです。
しだいに関係を深くもってしまうベビータ。映画では、スペインのひとたちは、たがいに相手側に殺された身内をもつことがあきらかにされていきます。内戦から70年以上たったいまでも、スペイン社会では、同じ国民同士が戦った深い傷をいやさなれないままに、現在にいたっているのです。
わたしも何本かスペイン内戦にかかわる映画を観てきましたが、そのたびごとにその龜裂の深さが感じ取れます。購入した映画のパンフレットにはこう書かれています。「国が二分されたせいか、(スペイン内戦を)真っ向から描くよりも、内戦やフランコ政権を背景として、子供を主人公にした映画が多い。」まさにそのとおりです。